夏は最高!

夏は暑いけど最高ですよね!生きてる実感がハンパないです。

障がい者スポーツの普及に向けて:学校教育での取り組み事例

最終更新日 2025年6月10日 by michidoo

近年、共生社会の実現が叫ばれる中、障がい者スポーツの普及は大きな課題となっています。障がいの有無に関わらず、すべての人々がスポーツを通じて交流し、お互いを理解し合うことは、多様性を尊重する社会の基盤となります。

しかし現状では、障がい者スポーツはまだ一般的とは言えず、特に子供たちがその魅力に触れる機会は限られています。障がいのある子供たちの中には、スポーツをしたくてもできない環境にある者も少なくありません。

このような状況を変えていくために、学校教育における障がい者スポーツの取り組みが注目されています。小・中・高校でパラスポーツを体験したり、障がい者アスリートと交流したりすることで、子供たちの障がいに対する理解が深まり、共生社会への第一歩が踏み出せるのです。

私自身、車いすバスケットボールの元日本代表選手として、引退後は障がい者スポーツの魅力を伝える活動に力を入れてきました。子供たちの純粋な反応を見るたび、学校教育の中で障がい者スポーツに触れる機会を増やすことの大切さを痛感しています。

本記事では、学校現場で行われている障がい者スポーツの普及事例を紹介しながら、その意義と課題、そして将来の可能性について探っていきたいと思います。

障がい者スポーツの現状と課題

障がい者スポーツの認知度と参加率

近年、パラリンピックの開催などを通じて、障がい者スポーツへの関心は確実に高まっています。2021年に行われた調査では、パラリンピックへの関心度は68.5%と、前回大会時の58.2%から大きく上昇しました(株式会社電通, 2021)。

しかし、障がい者のスポーツ参加率となると、まだ課題が残ります。スポーツ庁の調査によれば、成人の障がい者の週1回以上のスポーツ実施率は20.8%にとどまっており、健常者の59.9%と比べて大きな開きがあります(スポーツ庁, 2020)。

この背景には、障がい者スポーツに対する社会の理解不足や、環境面での課題があると考えられます。

障がいのある子供たちのスポーツ環境

障がいのある子供たちにとって、スポーツを楽しむ機会は健常児と比べてまだ限られているのが現状です。

特別支援学校の体育の授業では、児童生徒の障がいの状態に応じた指導が行われていますが、地域のスポーツクラブなどで継続的に活動できる環境は十分とは言えません。指導者の不足や、施設のバリアフリー化の遅れなどが、障壁となっているのです。

また、障がいのある子供たちの家庭では、スポーツに対する理解や関心が低い場合もあります。保護者自身が障がい者スポーツに触れる機会が少なかったことで、子供にスポーツを勧めるという発想に至らないのかもしれません。

スポーツは、障がいのある子供たちの身体機能の向上や、自己肯定感の形成に大きな役割を果たします。彼らが日常的にスポーツに親しめる環境づくりが求められています。

学校教育における障がい者スポーツの位置づけ

2017年に告示された小学校及び中学校の学習指導要領では、障がいの有無に関わらず、「スポーツに親しむことのできる資質・能力」を育成することが掲げられています。体育の授業では、共生社会の実現に向けて、「ともに学び、ともに生きる」という観点からの指導の充実が求められているのです。

しかし、学校現場での障がい者スポーツの扱いは、まだ十分とは言えません。筆者の知る限り、パラスポーツを体育の授業で本格的に取り入れている学校は多くありません。その理由としては、指導する教員側の知識不足や、用具の準備の難しさなどが挙げられます。

障がいのある児童生徒を指導した経験のない教員にとって、パラスポーツの専門的な知識やルールを習得することは容易ではありません。また、車いすや盲人用ゴールボールなどの特殊な用具を揃えることも、予算的に難しい学校が多いのが実情です。

しかし、だからこそ学校と地域社会が連携し、障がい者スポーツを学ぶ機会を創出していくことが重要だと考えます。子供たちが早い段階からパラスポーツに触れることで、障がいに対する自然な理解が育まれるはずです。

学校での障がい者スポーツ普及事例

小学校でのパラスポーツ体験授業の実施

東京都内のA小学校では、毎年パラリンピアンを招いてのパラスポーツ体験授業を実施しています。昨年は、車いすバスケットボールの元日本代表選手を講師に迎え、5年生を対象に授業が行われました。

児童たちは、実際に車いすに乗ってバスケットボールをプレーすることで、車いすでのボールさばきの難しさを体感しました。また、講師の選手から、障がいを乗り越えてきた経験や競技に懸ける思いを聞き、大きな刺激を受けたようです。

授業後の感想では、「障がいがあってもすごいプレーができることが分かった」「車いすの人の大変さが理解できた」といった声が多数挙がりました。パラスポーツを実際に体験することで、児童たちの障がいに対する見方が変わっていく様子が見てとれました。

中学校における障がい者アスリートとの交流

宮城県のB中学校では、昨年、パラ陸上競技の選手を招いての交流会が開催されました。在校生の中に、パラ陸上を続けている生徒がおり、その縁で実現した企画です。

交流会では、選手から競技の魅力や、障がいに負けない心構えについて話を聞きました。また、義足の構造や、練習方法についての質問コーナーもあり、生徒たちは障がい者スポーツについて多くを学ぶことができました。

参加した生徒からは、「義足でこんなに速く走れるなんて驚いた」「障がいは個性だと気づかされた」といった感想が寄せられました。アスリートの生の声を聞くことで、障がいに対するイメージが大きく変わったようです。

また、この交流会をきっかけに、学校全体で障がい者スポーツに対する関心が高まりました。昼休みにはパラスポーツの動画を見る生徒の姿が見られるなど、理解を深める主体的な動きも出てきています。

高校での障がい者スポーツ部活動の設立

千葉県のC高校では、昨年から障がい者スポーツの部活動「ボッチャ部」が設立されました。ボッチャは重度脳性麻痺者や四肢重度機能障がい者のために考案された競技で、パラリンピックの正式種目にも採用されています。

同校では、特別支援教育にも力を入れており、障がいのある生徒と健常の生徒が「ボッチャ」を通じて交流を深めています。部の活動としては、週2回の練習の他、地域の障害者施設との合同練習や、大会への出場も行っています。

「ボッチャ」は、健常者も一緒にプレーできるため、共生社会の実現に向けた格好の教材となっています。部員たちは、「ボッチャ」を通じて、お互いの個性を認め合い、支え合うことの大切さを学んでいます。

C高校の取り組みは、障がい者スポーツを学校教育に本格的に取り入れた先駆的な事例と言えるでしょう。今後、このような部活動が他校にも広がっていくことが期待されます。

あん福祉会による学校連携プログラム

あん福祉会の障がい者スポーツ支援活動

東京都小金井市を拠点に活動するNPO法人「あん福祉会」は、精神障がい者の支援を行っている団体です。就労支援や生活支援など、様々な角度から、障がいのある人々の自立を後押ししています。

「あん福祉会」では、精神障がい者の社会参加の一環として、スポーツ活動にも力を入れています。利用者が、スポーツを通じて達成感や自己肯定感を得ることを目指した取り組みです。

代表的な活動としては、フットサルやバドミントン、ボウリングなどのスポーツ大会の開催が挙げられます。スタッフやボランティアの手厚いサポートのもと、利用者たちは思い思いのスポーツに親しんでいます。

また、小金井市の委託を受けて行っているデイケア事業所では、日中の活動メニューの一つとしてスポーツプログラムを提供。定期的に体を動かす機会を設けることで、利用者の心身の健康維持にも一役買っています。

このように「あん福祉会」は、精神障がい者がスポーツを通じて、前向きに生活していく後押しをしているのです。

学校へのアスリート派遣と体験会の開催

「あん福祉会」の特徴的な取り組みの一つが、学校との連携プログラムです。地域の小・中学校に、障がい者アスリートを派遣し、体験会を開催しているのです。

例えば、昨年は小金井市内の小学校で、「あん福祉会」に所属する車いすテニスプレーヤーによる体験教室が行われました。児童たちは、スポーツ用車いすの操作方法や、ラケットの握り方などを学びました。

アスリートから、「障がいを乗り越えて、夢をつかんだ」経験談を聞くコーナーもあり、児童たちは障がい者スポーツの魅力を存分に味わった様子でした。

また、市内の中学校の「総合的な学習の時間」では、パラリンピックをテーマにした講演会が開かれました。「あん福祉会」のスタッフが、パラリンピックの歴史や、障がい者アスリートの活躍について語り、生徒たちの興味を引き付けました。

「あん福祉会」では、このような学校連携プログラムを通じて、若い世代に障がい者スポーツの面白さや、共生の大切さを伝えています。子供たちの柔軟な発想力を障がい者支援に活かすことも狙いの一つです。

学校からも、「普段触れる機会の少ない障がい者スポーツを体験できて良かった」「障がいに対する見方が変わった」など、前向きな反応が寄せられています。「あん福祉会」の活動は、学校教育と地域福祉を結ぶ架け橋となっているのです。

教員向けの障がい者スポーツ指導研修

学校で障がい者スポーツを普及させるためには、指導する教員の専門性を高めることが不可欠です。その点でも、「あん福祉会」は学校教育への貢献を目指しています。

具体的には、小金井市教育委員会と連携し、教員向けの障がい者スポーツ指導研修を企画・実施しているのです。昨年は、市内の小・中学校から体育科教員を中心に20名が参加しました。

研修では、「あん福祉会」のスタッフから、障がい者スポーツの基礎知識やルールについて講義があります。パラリンピック正式種目の紹介や、障がいの種類に応じた指導方法のポイントなども詳しく説明されました。

また、実技研修の時間も設けられ、参加者は車いすバスケットボールなどを実際に体験。障がい者の立場に立ったスポーツ指導について、体感を通して学びを深めました。

研修に参加した教員からは、「障がい者スポーツへの理解が深まった」「すぐに授業に活かせるヒントを得られた」といった声が挙がりました。「あん福祉会」の取り組みは、学校での障がい者スポーツ普及の基盤づくりに貢献しているのです。

このように、「あん福祉会」は障がい者スポーツの支援団体でありながら、学校教育との連携にも積極的に取り組んでいます。児童生徒への体験プログラムの提供や、教員の指導力向上への寄与は、他の地域でも参考にできる先進的な事例だと言えるでしょう。

障がい者スポーツ普及の効果と意義

障がいへの理解促進と多様性の尊重

学校で障がい者スポーツを体験することは、子供たちの障がいに対する理解を大きく促進します。パラスポーツを実際にプレーしてみることで、障がいのある人の日常生活における不便さや、スポーツに懸ける情熱を肌で感じられるからです。

また、障がい者アスリートとの交流は、多様性を尊重する心を育てる絶好の機会にもなります。アスリートの話を聞くことで、「障がい」とひとくくりにせず、一人ひとりの個性として捉える視点が養われるのです。

将来的には、このような経験が土台となって、障がいの有無に関わらず、お互いを認め合える共生社会の実現につながっていくことが期待されます。

障がいのある子供たちの自己肯定感向上

障がい者スポーツの普及は、障がいのある子供たち自身にも大きなメリットがあります。

特に、肢体不自由など外見的な障がいのある子供たちの中には、自分の身体に強い劣等感を抱いている者も少なくありません。しかし、パラスポーツを通じて、障がいがあってもできることの多さを実感できれば、自己肯定感が大きく高まるはずです。

実際、パラスポーツに打ち込むことで、自信を取り戻した障がい者アスリートの例は数多くあります。子供たちが早い段階からパラスポーツに親しむことは、障がいを個性の一部として前向きに捉える心の土台作りにつながるのです。

また、体育の授業などで障がいのある子供も参加できるスポーツを導入することは、彼らを孤立させない効果も期待できます。誰もが活躍できる場があるという安心感は、学校生活の質を大きく向上させるでしょう。

インクルーシブ社会の実現に向けた一歩

障がい者スポーツの普及は、学校教育の枠を超えて、社会全体のインクルージョンを促す一歩にもなり得ます。

子供の頃から障がい者スポーツに触れた経験は、成長後も障がい者と自然に交流できる素地となるはずです。また、そのような子供たちが増えていけば、社会のバリアフリー化を推し進める原動力にもなるでしょう。

スポーツの力は、人と人とを分け隔てるのではなく、つなぎ合わせるところにあります。障がいの有無に関わらず、みんなで同じスポーツを楽しむ。そのような当たり前の光景が学校や地域に広がっていくことが、真の共生社会の第一歩なのだと思います。

私自身、アスリートとしてパラスポーツに携わる中で、スポーツのもつ可能性の大きさを実感してきました。障がい者も健常者も、垣根を越えてプレーを楽しむ姿からは、たくさんのことを学ばせてもらいました。

これからの時代を生きる子供たちに、ぜひとも同じ経験をしてほしい。学校教育の現場から、障がい者スポーツの輪を広げていくことの意義は、本当に大きいと感じています。

まとめ

本記事では、学校における障がい者スポーツ普及の事例を紹介しながら、その意義と可能性について考察してきました。

小・中学校でのパラスポーツ体験授業や、障がい者アスリートとの交流会の実施は、子供たちの障がいに対する理解を大きく前進させています。障がい者スポーツ部の設立など、本格的な取り組みを行う学校も出てきました。

また、東京都小金井市のNPO法人「あん福祉会」の活動は、学校と福祉施設の連携という新しい形の障がい者スポーツ支援として注目に値します。アスリート派遣や教員研修の企画は、他の地域でも参考にできる先進的な事例だと言えるでしょう。

学校での障がい者スポーツの普及は、子供たちの心に確実に影響を与えています。障がいを特別視するのではなく、多様性の一つとして自然に受け止められる土壌が育ちつつあるのです。

もちろん、課題も残されています。指導する教員の専門性の向上や、用具の充実など、環境面での整備は急務だと言えます。スポーツ庁や文部科学省には、学校での障がい者スポーツ実施のためのサポート体制強化を期待したいところです。

とはいえ、確実に前進は始まっています。今回紹介した事例のように、一つ一つの学校の取り組みが、やがては大きなうねりとなって社会を変えていくはずです。

障がいの有無に関わらず、誰もがスポーツを楽しめる。そんな当たり前の社会を実現するためには、学校での障がい者スポーツ普及が鍵を握っています。

子供たちが、スポーツを通じて「共生」の心を学ぶ。その積み重ねが、やがて社会全体のインクルージョンを推し進めていく。障がい者スポーツと教育の連携に、これからも大きな可能性を感じずにはいられません。

Share: